クトゥルフ神話TRPGシナリオ『くらい夢から』
![](http://cf276130.cloudfree.jp/wagtailtp/wp-content/uploads/2023/12/image.png)
シナリオ作者:しろぐみ 背景素材:ぱくたそ(https://www.pakutaso.com/)
2023.12.22:テキスト修正
2020.04.11:サイト公開用に修正
2019.09.23:テキスト修正
2019.07.30:テキスト修正
2017.09.09:PL限定で公開
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」
シナリオについて
クトゥルフ神話TRPG(第6版)に対応したRP重視のオリジナルシナリオです。
CoCらしい『狂気』『宇宙的恐怖』を求める方にはあまりお勧め出来ない内容になっています。
PL向けシナリオ概要
◆傾向
RP重視
舞台 :現代日本 季節指定無し
人数 :ソロ推奨
時間 :短編シナリオ
テキスト進行で5~8時間
探索者:職業、経歴、年齢に制限無し
◆技能
推奨:図書館、目星、聞き耳
推奨技能が無くても生還は出来ます
◆導入
ある日、仲の良い人(NPC)と一緒に過ごす場面から始まります
- シナリオ背景
- KP向け補足
- NPCについて
- シナリオ:導入
- シナリオ:朝
- シナリオ:探索-同行NPCについて
- シナリオ:探索-友人NPCの家
- シナリオ:探索-待ち合わせ場所
- シナリオ:探索-図書館
- シナリオ:探索-ホテル
- シナリオ:エンディング
- シナリオ:シナリオ補足
目次
シナリオ背景
◆あらすじ
友人と穏やかな日常を過ごす探索者。明日も会う事を約束したその日、友人が大怪我をする夢を見る。探索者が見た悪夢は現実で既に起きていた事だった。
友人は1ヶ月前、事故に巻き込まれ大怪我を負い、昏睡状態に陥ってしまった。偶然か必然か、探索者も後を追うようにシナリオ開始の1日前に事故に遭い、意識を失った。
探索者と友人の意識は現実の世界に近いようで全く異なる、奇妙な場所に迷い込んでいた。探索者は事故のショックで意識が朦朧としていた。そこで自分のよく知る友人に出会ったことで、この異世界を現実だと認識するようになる。先に異世界に来ていた友人は探索者の来訪に驚きつつ、この自由な世界でまた一緒に過ごせるようになったことを喜び迎え入れた。
しかし導入で、友人は意識を失った探索者に呼びかける家族や友達の声を聞く。「この人は生きるべきだ」と思い直した友人は探索者を現実世界に返すために行動を始める。
異世界で親しくなった(または昔仲良くしてた人・遠い親戚の)NPC1・2に現実世界に帰る扉があるホテルまでの案内を頼んで自分は日記を書いたり、事故があった日の新聞紙を抜き取ったりして、少しずつ、確実に、探索者が自分の力で記憶を戻すよう細工をした。
◆補足
シナリオ開始時点では探索者は幻覚を見ている。
探索者の意識は死の淵を彷徨っており、生死の境が曖昧で、夢を見ているような状態になっている。
「夢の終わりであなたを待つ」という言葉を目にしたのを切っ掛けに、徐々に意識が覚醒していく。
情報を集め、現実世界に近づく事で記憶を取り戻し、正気に戻っていく。
◆異世界について
死に向かう人と死者がいる世界。
ここが現実でないと分かっていても、現実世界と同じように生きることを望めば、生前とほぼ変わらない生活が出来る。やろうと思えば何でもできる世界。
(『ドリームランド』が近い世界観かもしれません。KPをする際は自由に設定を生やしたりぼかしたりしてください)
KP向け補足
◆シナリオ本文について
KP・PLが楽しめる形になるよう自由に改変してください。
改変したシナリオの再配布は禁止します。
シナリオに記載されている描写例はコピー&ペースト・書き換え可能です。
◆探索者について
継続・新規問わずプレイ出来ますが、探索者に友人NPC設定が付与される事、シナリオの都合上友人と探索者が大きな怪我を負う事が確定しているのでPL・KPの傾向次第では新規探索者で参加するように伝えた方が良いかもしれません。
キャラクターシートに
・どんな家に住んでるか、普段どう過ごしてるか
・家族構成や交友関係
二点を簡単に記入してもらうとシナリオ描写がスムーズに出来ると思います。
NPCについて
登場するNPCは3人。
下記NPC詳細を参考にして自由に設定してください。
・友人NPC
シナリオ冒頭とラストのみ登場。
関係性は自由だが、探索者が積極的に友人を探しに行けるような仲だとシナリオを進行しやすいかもしれない。
・NPC1
探索中同行するNPC。
世界観説明と誘導役。必要あれば探索者が技能を失敗した時等の補助。
・NPC2
扉から出られるのは1人だけではないことを教える役。
END4を入れる場合必要なNPC。KPが必要無いと感じたら登場させなくても良い。
◆友人NPC
・PLに伝える設定
名前、年齢、探索者との関係。
子供の頃から叶えたい夢があり、実現を目指してずっと努力をしている。
近々、今住んでいる場所を離れる事になっている。(留学、新生活等。理由は自由に決める)
・秘匿設定
友人は1月前に事故に遭っていた。
順調に夢の実現に近づいていた所で突然道を絶たれてしまい、ひどくショックを受ける。
自分が完全に死んでない事、目覚めようと思えば目覚められる事を知っているが、体の自由がきかない程に重い怪我を負った事も覚えている。その時の友人は元通りの生活に戻れない現実を受け入れる事が出来なかったので、自由でいられる異世界に留まる事を選ぶ。
友人NPCは探索者の事が大好き。
探索者には現実の世界で生きて欲しいと願っているので探索者を元の世界に帰そうとするが、自分と一緒にいる事を望まれるとその意思が揺らぐ。探索者の選択が何でも拒まず、自分の意思で受け入れる。
ステータスはPOW10で固定。
他のステータスは探索者に合わせる、ダイスに任せる等自由な形で決める。
◆NPC1・2
パーティードレス姿の女性またはスーツ姿の男性。
NPC1・2の本来の姿は異世界に長く居過ぎて、人としての形を失ったグール(ゾンビ)。
シナリオ進行に従い人の姿から離れていく。
NPC1もNPC2も現世に強い未練がある。
NPC1は自分の境遇をある程度受け入れ、異世界で過ごしていく事を選んでいる。
NPC2は受け入れられないまま、ずっと現世に戻ることを望んでいる。
探索者を見守るように接するNPC1に対し、NPC2はまともに意思疎通が出来ない。(SAN0のイメージ)
◆NPC1・2サンプル
・新島 真琴(あらしま まこと)
年齢:40代半ば 身長:160~170程
生前は基礎心理学について教えていた大学教授だった。
当時既婚者で、中学生の娘がいた。
5年(以上)前、事故に巻き込まれ帰らぬ人となった。
家族に、特に妻と娘に一目会いたかったと思っている。
・新島 芽美(あらしま めぐみ)
年齢:30代後半 身長:兄より小さい
生前は小児科の医師だった。
5年(以上)前、兄と同じ事故で帰らぬ人となる。
芽実はその頃重い病気の患者を診ていた。
自分の手で治すことが出来なかったのを心残りに思っている。
シナリオ:導入
◆待ち合わせ
昼頃、探索者は仲の良い友人NPCに誘われて遊びに出掛ける。
待ち合わせ場所は、二人で出掛ける時にいつも使っている場所。
友人と探索者が自由に会話出来るシーンが限られているため、探索者と友人NPCの関係を確認・すり合わせをしながらRPをすると良いかもしれない。
ある程度会話したら次のシーンへ。
◆謎の声
聞き耳を振ってもらう。
失敗した場合は特に何も聞こえない。
成功したら誰かが叫ぶような声が微かに聞こえる。続けて正体の分からない視線を感じる。
(成功結果)
遠くから、誰かが叫ぶ声が聞こえた気がした。
声の方に注意して耳を傾けても、それがどこからのものかは分からない。
ふいに視線を感じた。
あなたは咄嗟に周囲を見渡すが、その視線の正体も分からない。
何かが自分を見ている。監視されているように感じる。
聞き耳に成功した場合SANC0/1。
声の正体は意識を無くした探索者に呼びかける家族や友人、または看護師。探索者にとって、正体の分からない声と視線は不気味なものに感じる。声はPCの聞き耳結果がどちらでも、友人NPCに聞こえている。
周囲を気にしている探索者の様子を見た友人が「……どうしたの?」と声をかける。
探索者が何でもないと答えたなら「そう?」と気にかけつつ納得する素振りを見せ、声と視線の事を話したら「何も聞こえなかったけど」と知らないふりをする。友人はここで、探索者を現実に戻すために行動をする決心をする。
◆友人の誘い
友人が、気分を切り替えるように話しかける。
「明日の昼、時間ある?」
そう言いながらチケットを取り出して探索者に見せる。
「友達に譲ってもらったんだけど、一緒にどうかな」
何のチケットにするかは自由に決めて良い。(映画、遊園地、美術館等)
探索者は明日も会えるという事にして、約束を取り付ける。
待ち合わせ場所と時間が今日と同じである事を伝えてから帰宅する。
帰宅後、PLがやりたい事を終えたら次の日へ。
☆可能であれば解散までに友人から伝えておきたい事
・自分がもうすぐ遠くに行って、探索者に会えなくなる事
・会えなくなる前に、思い出作りをしたい事
・明日の午前は用事がある事
朝
◆悪夢
あなたは待ち合わせ場所に向かっている。
道路を挟んだ向こう側の歩道に、友人の姿を見つけた。
あなたは声を掛けるが、向こうはこちらに気づかないまま歩いている。
もう一度声をかけて、友人の元に行こうとしたその時、遠くでブツンと、何かが切れるような、嫌な音がした。
その音が友人がいた場所……
建設の作業現場から聞こえてきた事に気付いたのと、
顔を上げた[彼or彼女]に鉄骨が降って来たのは同時だった。
耳を裂くような金属音が響く。
それを見たあなたがその時どうしたのか。
叫んだのか。[彼or彼女]の元へ駆け寄ったのか。
自分では全く認識することが出来なかった。
……
耳障りな目覚ましの音が、あなたの意識を無理矢理浮上させる。
あれは夢だった。なのに嫌にリアルだったあの音が、まだ耳から離れない。
探索者は友人が事故に遭う夢を見て目覚める。SANC0/1
探索者が現実で、友人が事故に遭った所を目撃していたかどうかはシナリオ側で決めていない。
KPが決めて良いし、曖昧にしても良い。
◆朝
今日は天気が良くないようで、部屋は薄暗く外から雨の音が聞こえる。
(ドアの向こうからはテレビの音と、談笑している家族の声が聞こえる。)
あなたは朝食を取って、待ち合わせの時間まで家で過ごす事になる。
約束の時間まで自由行動ができる。
普段と変わらない家の描写をして、次のシーンの不自然さを強調させる。
チケットを確認するor早めに待ち合わせ場所に行くとPLが宣言した場合、次のシーンへ。
天気予報を見るなら、雨は今日一日振るらしい事が分かる。この時点では友人NPCとは普通に連絡が取れる。もし探索者から「早めに会おう」「迎えに行く」といった申し出があった場合、友人NPCは「今は用事がある」「家族と一緒にいるから平気」等理由をつけて断る。
PLがやりたい事を終え次第次のシーンへ。
◆異変
外出準備中、チケットを手にした瞬間異変が起きる。
持ち物を確認するついでに何気なくチケットを手にした時、あなたは違和感を覚える。
チケットは昨日友人から受け取ったそれとは全く違う。
見覚えのない文字が書かれていた。
「夢の終わりであなたを待つ」○月△日(月)
開場 19:30コンフィーネホテル 1Fホール
あなたの頭に疑問が浮かぶのと同時に、ふっと部屋の電気が消えた。
☆チケットの日付に合わせて『図書館の新聞記事』の日付を変える。
◆家の中
昼間なので明かり無しでも歩き回れる。電気のスイッチを押しても、ブレーカーを確認しても、部屋は明るくならない。電子機器が使えなくなった事以外、様子は変わってないように見えるが、探索者が一人暮らしではない場合はさっきまで家にいたはずの同居人の姿がない事に気づく。
家族の姿がどこにも見当たらない。
この家にあなただけが取り残されたかのようだ。
携帯の画面は真っ白になっており、どこを押しても反応が無い。テレビも点かなくなっている。電子機器が使用できないのでインターネットを使った調べ事は出来ない。
探索者はコンフィーネホテルという名前に覚えは無い。
アイデア・聞き耳・目星のどれかを振ることが出来る。
アイデアまたは聞き耳成功で、静かすぎる事に気づく。
嫌に静かだ。家の中からも、外からも、物音1つ聞こえない。
目星成功で、外に人一人いなくなっている事に気づく。
窓の外の景色が目に入る。
あなたがよく知る、いつも通りの風景だ。いつの間にか雨はあがっている。
外には人一人居なかった。嫌に静かだ。とあなたは思った。
◆外に出る
あなたは外に出た。
(あなたがよく知る、いつも通りの風景だ。いつの間にか雨はあがっている。
ただ、静かすぎる。外には人一人居なかった。)
いつもなら賑やかなはずのこの通りは、死んだように静まり返っていた。
人の声も、足音も、車が走る音も、鳥の鳴き声も、風の音すらも聞こえない。
恐ろしいほどに澄んだ空気は、あなたの身体の芯まで冷やして行くかのようだった。
外に出ると、うすら寒さを覚えるくらいに、辺りは静まり返っていた。
SANC0/1
外に出てから探索開始。
友人の家・待ち合わせ場所→図書館→ホテルの順に探索する。
探索者と友人の設定やそれまでのRPに合わせて他の施設等に変更したり、新しく探索場所を作っても良い。
同行NPCについて
◆同行NPC
外に出た後、
・探索者またはPLがどうしようか困っている時
・人を探すと宣言した時
・一か所探索した後
等適当なタイミングで同行NPCを登場させる。
少し離れたところに人のシルエットがあるのを見つける。
あなたが近づくと、この場所には不似合いな、ドレス姿の女性(orスーツ姿の男性)がそこに立っていた。
NPC1は探索者に対して友好的に接する。
このチケットは何だろう、友人を探している、今一体どうなっているんだ、という話になれば
夜になるまで友人探しを手伝う、ホテルに行けば分かる、ホテルまで同行する、 等提案して探索者に同行する。頼まれなくても勝手についていく。NPCのRPで探索場所まで誘導させる。
例:「お友達とはどこで会う予定でしたか?」「家にはいないでしょうか?」「夜になるまで、図書館に寄っても良いでしょうか」
◆会話内容
今いる世界の事は話さない。自分の事も図書館に着く頃までは詳しく話そうとしない。
探索者の質問に対する回答は全体的に曖昧。分からない事があるならホテルに行けば良いという事くらいしか教えない。探索者がこうなのかな?と聞けば「そうかもしれない」「きっとそうですね」といった調子で返す。探索者の意識が現実に近づくと曖昧な回答はしなくなる。
・会話例
ここはどこ?
→「見た通りの場所です。何も無いでしょう」
コンフィーネホテルについて話す
→「コンフィーネホテルのパーティーですね。私も参加します」
パーティーの内容について
→「ある人をお祝いするパーティーです」
探索者がチケットを持っているのを知っているなら
「折角参加出来るのだから、自分の目で確認してみてはどうでしょうか」と提案する。
友人の家
◆友人の家に行く
部屋に明かりはついていない。鍵が掛かっていないので、家に入ることが出来る。
友人の姿も、同居人の姿も、どこにも見当たらない。
友人の部屋は片付いている。(あなたが知る[彼/彼女]の部屋と変わりない。)
机にはノートと、動かないデジタル時計が置かれている。
片付けが苦手な友人だと部屋が散らかっているかもしれない。
部屋の描写や、探索に必要な技能は自由に考える。
◆デジタル時計
昼頃で止まっている。
◆ノート
友人が書いた日記を読むことができる。
ノートの中身は友人が書いた日記のようだ。
あまりまめな性格で無いようで、1つ1つの日付は間が空きがち。
「◯◯と出かけに行った」「◯◯と食事に行った」みたいな何でもない、
でも印象に残っただろう出来事が、[彼/彼女]の視点で書かれている。
読み進めて行く内に、あなたの記憶が鮮やかに蘇る。
確かに昔、こんな事があった。
あなたが覚えてる限りの、友人との思い出が全部、この日記に綴られていた。
……日付のほとんど全部に、あなたの名前が入っていた。
また今日から一ヶ月前の日付で
もうすぐ地元を離れ、遠くに行くことへの期待や不安が書かれている。
友人が先日に、探索者に向けて書いた思い出日記。
日記の内容で友人NPCの個性を出しても良いかもしれない。
目星に成功すると、チケットや鞄、財布といった、友人の私物がどこにも無いため、家に帰って来ていない事が分かる。
◆友人の家を出た後
友人の家(または待ち合わせ場所)の探索後に描写。
薄桃色の空が広がっている。
よく見知った景色なのに、あなたは違和感を感じる。
道路の標識、電灯、電柱が無くなっている。
自分の知る街の姿が、少し変わっている。
待ち合わせ場所
あなたと友人がいつも使っている待ち合わせ場所の近くまで来た。
道路を挟んだ向こう側の歩道に、友人の姿を見つけた。
ブツンと、聞き覚えのある音が聞こえた。
友人の頭上に鉄骨が降る。
[彼/彼女は]こちらを振り返ることもなく、潰されてしまった……はずだった。
あの金属音は聞こえなかった。
あなたが気付いた時には、鉄骨も、[彼/彼女]の姿も、消えてなくなっていた。
探索者が見た幻覚。同行NPCには見えていない。
目星成功でメモを見つける。友人がいた場所まで行くと宣言したらダイスロール無しで出す。
「これはあなたが見た夢に過ぎないが、現実だ」
と手書き文字で書かれている。
手書き文字に対してアイデアを振ることが出来る。
成功でその筆跡が友人のものに似ていると感じる。
先に友人の家で日記を見ていた場合はアイデアロール無しで分かっても良い。
図書館
◆図書館に行く前
NPCの姿を見たとき、探索者は違和感を覚える。
[NPC1]の手に目が行く。
最初に会ったときは傷一つ付いてなかったはずの[彼/彼女]の手が土色に変わり、爛れているように見える。
SANC0/1d3
NPCは自分の異変に気が付いていない。
探索者が指摘すると「そうですか?」と初めて気付いたような態度を取る。痛みは感じていない様子。
◆図書館
図書館はあなたがよく知る場所では無くなっていた。
あなたが想像していたよりずっと広い空間に、多くの本棚が並んでいる。
人の姿はすぐ側にいる[NPC1]以外、見当たらない。
本棚には分厚い本が隙間なく並んでいる。
本来、タイトルが書かれているはずの背表紙には、
何故か人の名前が書かれている。
他には、ここ数ヶ月分の新聞紙が置かれているスペースがある。
図書館はこの世界にいる人の情報が分かる不思議空間になっている。
図書館というより保管庫、資料室のようなイメージ。普通の本も置いてある。
本棚スペースと新聞紙スペースに目星or図書館が振れる。
◆本棚スペース
分厚い本には幼少期から現在まで事細かに、[彼/彼女]のことが書かれている。
中にはあなたの知らないような事も書かれていた。
ページの最後の方は、[彼/彼女]自身が書いたかのような文面になっている。
・もうすぐ夢が叶うはずだったのに、台無しになってしまった事
・ここ(夢の世界)なら夢が叶えられる、自分の居場所が夢の世界になっても構わない事
が書いてある。
事故の直後の友人の心境が書かれている。
◆新聞紙スペース
1月前の新聞記事の、ある見出しに目が行く。
『作業事故 [男性/女性]が意識不明の重体』
○○月○○日××時頃、—県—市○丁目の作業場で
通行人の[男性/女性]が鉄骨の下敷きになり病院に搬送された。
現在意識不明の重体である。
この事故の原因は、資材を運搬するクレーンの誤作動によるものだとされ———
友人が事故に遭った時の新聞記事。
住所は夢で見た場所と同じ。探索者にとって見覚えのある住所。
以下スペクリ、またはPLが確認したら出す情報。(END4を入れる場合は、『同行NPCの本』を必ず見せる)
◆同行NPCの本(サンプル)
職業が医師であること、新島真琴(あらしままこと)という名前の兄がいる事、
5年ほど前、兄に乗せてもらった車で移動中、事故に遭ったらしい事が分かる。
自分の都合で兄を呼び出してしまった事、その頃診ていた患者に最後まで寄り添えなかったのを悔やんでいる事が本の最後に書かれている。
職業が大学教授であること、新島芽実(あらしまめぐみ)という名前の妹がいる事、
5年ほど前、妹を乗せた車を走らせてる時事故に遭ったらしい事が分かる。
妹を巻き込んでしまった事、家族を置き去りにしてしまった事を悔やんでいる事が本の最後に書かれている。
同行NPCの詳細と死因、未練が書かれている。
◆コンフィーネホテルについて
コンフィーネは外国語で「地境・境界線・境目」等を意味する言葉だということが分かる。
◆新聞スペース
先日分の新聞記事が無くなっている事が分かる。
過去の新聞記事を見て、ピンとくる内容(探索者が覚えている出来事)は一つもない。
「そのニュースを知らない」というより、「頭のなかにモヤが掛かったようで、思い出そうとしても思い出せない」感覚がする。
◆同行NPCと会話
探索者が調べ物をしている間は、NPC1は読書スペースで自分の職業関係の本を読んでいる。
もし探索者がNPC1の事が書かれた本を読んだことを話しても、不快感を示さない。
(恥ずかしそうに、寂しそうに笑ったりするかもしれない)本の内容に間違いが無い事も話す。
夕方になると、図書館を出てホテルに向かう。
「そろそろ時間ですね」窓から外を見て、[NPC1]は本を戻しに行く。
「行きましょうか?」
◆図書館を出た後
図書館を出た後で描写。
外の景色は、まるで別世界だった。
塗装されているはずの地面がボロボロに割れており、剥がれたアスファルトから真っ赤な土が見える。
空は、夕焼けと夜が混ざったかのような、曖昧で、不気味な色になっていた。
遠くから建物が崩れる音が聞こえた。
周辺の建物の壁はぼろぼろと崩れ、風化している。
「ぅ……うぅう……」
すぐ側から呻き声が聞こえた。
そこにいたのは[NPC1]……のはずだった。
手の爛れが全身に広がっており、裂けた口からは剥き出しの尖った牙が並んでいる。
[彼/彼女]の姿は人間によく似た、全く異なる怪物に変わり果てていた。
SANC0/1d4+1
SANCの数値はルールブック記載のグールを基準にしている。
(NPC1の体の異変を探索者は既に目にしているので、数値は少し減らしています。
探索者のリアクションによってSANCの値を増減して良いと思います)
NPC1は探索者を宥めるように言う。
「こわいかもしれないけど、だいじょうぶ」
「夢の終わりは、もうすぐそこだから」
探索者との話を終えると、NPC1はゆっくりとホテルに向かって歩き出す。
☆このシーン以降伝えられる事
1.夢から醒める事ができるのは、現実にも体がある人だけ。(生きている人だけ)
2.NPC1は既に死んでいるので元の世界に帰る事が出来ない。
3.NPC1は友人NPCと面識がある
ホテル
NPC2が探索者達を出迎える。
自分がよく知る風景はすっかり、見る影もなくなった。
二人で荒れ果てた街を歩く。
遠くに大きな建物のシルエットと、その建物にぼんやりと灯が点いているのが見えた。
朽ち果てた大きな建物の入り口で、一人の[男性/女性]が佇んでいる。
[男性/女性]、なのだろうか。
ボロボロな[スーツ/ドレス]を纏ってる姿からそう見えるだけで、
側にいる[男性/女性]と変わらない怪物の姿をしていた。
「お待ちしておりました」
あなたを見ると[男性/女性]らしき者はぎこちない礼をし、木製のドアをゆっくりと開けて中に入った。
建物の中は薄暗かった。
[男性/女性]が灯した蝋燭の光が周辺をぼんやりと照らしている。
近くで演奏会をしているのだろうか、
篭った音色の音楽が廊下の向こうから聞こえる。
「準備は、よろしいでしょうか」[男性/女性]があなたに話しかける。
探索者がはいと答えるとNPC2は扉を開ける。
あなたの返事を聞いてから、ゆっくりと扉が開かれる。
扉の向こうから、光が、音が漏れ出た。
ホールには大勢の人……のような物がいた。
先程まで側にいた彼らのような、『化け物』と形容したくなるものが、この豪華絢爛な装飾が施された部屋中にいた。
ボロボロの身体と服を引きずって、嗤ってるのか呻いてるのか分からない声をあげていた。
それはただの悪夢だと済ませるには、あまりにリアルな光景だった。
SANC1/1d4
部屋にいる化け物達の中には時折あなたの方を見る者がいるが、近寄って来る事は無く、部屋をゆっくりとうろついている。
中にいる人が危害を加える事は無い。
SANCの後、NPC2が探索者に話しかけ、その場を離れる。
「あなたはご存じでしょうか。ここは最も現実にちかい場所」
「コンフィーネ。これはあなたの知る言葉で境界線を意味します」
「今日は現世への扉が開く日。この夢から目醒める人がいる素晴らしい日です。
皆、あなたに興味を持って、ここまで来られた」
「……時がくるまで、ごゆっくりと、お楽しみください」
◆探索
目星成功で、友人の鞄を見つける。
バーカウンターのようなボロい机に、見覚えのある鞄が置いてあるのを見つける。
友人がいつも使っている鞄だ。
鞄の中に折りたためられた新聞記事と、見覚えのあるチケットが入ってるのを見つけた。
小さな見出しに書かれたある記事に目が行く。
車に衝突 [男性/女性]が意識不明の重体
○○日××時頃、—県—市○丁目の道路脇で[男性/女性]が倒れているのが発見された。
通行人の通報により病院に搬送された。頭を強く打ち、現在意識不明の重体である。
轢き逃げとされ現在調査を進めており—
☆探索者が事故に遭った時の新聞記事。友人が図書館から持っていった。
日付はチケットを渡された日の一日前。
◆NPC2との会話
NPC2が探索者に話しかけてくる。
(END4を入れないならこのシーンは飛ばしても構わない)
「どうですか、お楽しみいただけてますか」
「……あなたは、ご友人に会ったあとは、どうするおつもりですか」
「そのつもりなら、あなたに頼みたい事が」
「大した頼み事ではないのですが」
「目覚めるつもりなら、私もご一緒してよろしいでしょうか」
「あなたと一緒に外に出たら、私も、きっと、……」
探索者が断ったり、警戒する素振りを見せたら「残念です」と言ってその場を離れる。
承諾すると「ありがとうございます」と笑い声のような呻き声をあげる。
そのままNPC2と一緒に外に出たらEND4(ロストエンド)になる。
NPC1に割って入らせてNPC2の企みを阻止させても良い。
◆友人と再会
探索やRPをしたら、NPC1が探索者に友人と会える事を伝える。
NPC1は部屋の奥にある扉を指差す。
指さした先はに友人が立っていた。友人の元に行くと、友人は探索者に話しかける。
「あの、君はどこまで……ううん、向こうで話そう。ついて来てくれるかな?」
そう言って友人は扉の向こうへ行く。
あなたは友人と、長い廊下を歩く。
ぐしゃり、ぐしゃり、と何かを踏む音が耳に入る。
床に敷かれた柔らかいカーペットも、煌びやかな装飾も、建物も、いつの間にか無くなっていた。
昏い空、肉塊で出来た床、鉄の匂い。
あなたは、この生温い嫌な匂いをよく覚えていた。
確か、ここにくるまでの事だ。
あの時自分は、事故に遭った友人の御見舞に行こうとしていた。
横断歩道を渡る途中だった。突然、視界の外から急ブレーキの音が聞こえた。
車にぶつかった衝撃で、跳ね飛ばされて、段差に体をぶつけて、それから、
…………
廊下の一番奥、大きな扉の前に、友人はいた。
友人が振り向いてあなたを見ると、口を開いた。
「……思い出すことは出来た?それとも混乱してる?」
「君がここに来てくれて、正直、とても嬉しかった」
「ずっと君と一緒にいられると思ったから」
「チケットを渡した時の事は、覚えてる?」
「あの時、君の名前を呼ぶ、君の家族と、友達の声が聞こえた」
「君はこの夢から覚める事が出来る」
「この扉の先へ真っすぐ進んだら、皆の所に帰れる」
そう言うと友達は、扉の横に立つ。
探索者は自分の身に起きた事を思い出す。
友人に外に出ないのかと聞いたら
「私の事を思い出したのなら、分かるだろう」
と、事故に遭って、もう自由に動くことが出来ない体になった事を探索者に話す。
ここから探索者がどうしたいのか確認し、エンディングへ。
エンディング
◆END1(1人で外に出る)
友人は「どうか元気で」と笑って探索者を見送る。
あなたは扉を開け、先に進んだ。
向こう側は闇に覆われていた。
友人の言葉通りに、あなた達は真っ直ぐ、真っ直ぐ歩いた。
遠くにちらりと光る物が見えた。
光はだんだんと大きくなり、視界が白に染まるまで広がった。
その光にあなたは、心地よい暖かさと懐かしさを感じた。
暖かさに身を委ねるように、あなたは目を閉じた。
…………
あなたは目を開けた。
最初に視界に入ってきたのは、白い天井とあなたを心配そうに見る家族の顔だ。
あなたの名前を呼んでいるのが聞こえる。
『とても長い夢を見ていた』
まだ朦朧とする意識の中であなたは思った。
その後あなたは、後遺症を残すこと無く順調に回復し、退院することが出来た。
あれから友人が目をさますことは無かった。
友人の家族もその友達も、皆[彼/彼女]の死を悲しんだ。
もしあの時、[彼/彼女]の手を引いていたら、と考える事があるだろう。
どうなっていたかなんて分からない。ただ夢の中の[彼/彼女]は笑っていた。
あなたを笑って見送っていた。
[彼/彼女]は今でも、くらい、儚い夢の中で、夢を追い続けているのだろう。
◆END2(友人と外に出る)
あなた達は扉を開け、先に進んだ。
向こう側は闇に覆われていた。
友人の言葉通りに、あなた達は真っ直ぐ、真っ直ぐ歩いた。
遠くにちらりと光る物が見えた。
光はだんだんと大きくなり、視界が白に染まるまで広がった。
その光にあなたは、心地よい暖かさと懐かしさを感じた。
暖かさに身を委ねるように、あなたは目を閉じた。
…………
あなたは目を開けた。
最初に視界に入ってきたのは、白い天井とあなたを心配そうに見る家族の顔だ。
あなたの名前を呼んでいるのが聞こえる。
『とても長い夢を見ていた』
まだ朦朧とする意識の中であなたは思った。
退院後、あなたは友人のお見舞いに行った。
あなたがここに来ることが分かっていたかのように、
固く閉ざされていたはずの[彼/彼女]の瞼がゆっくりと開かれる。
あなたを見た[彼/彼女]の瞳が微かに揺れた。
何度も瞬きし、口をぱくぱくと動かした。必死に何かを伝えようとしていた。
『ありがとう』
[彼/彼女]の声は掠れて、ほとんど聞き取ることは出来なかった。
でも、そう言っているように聞こえた。
[彼/彼女]はあなたを見て、静かに、涙を流していた。
そして、あなたに笑いかけた。
◆END3(外に出ない)
「そっか、分かった」
友人はそれだけ言って、あなたの顔を見て微笑んだ。
いつの間にか、不気味な光景は消えてなくなっていた。
目前にあるのはホテルの長い廊下だ。
「あ、もうこんな時間!早くしないと終電間に合わないよ!」友人とともに温かい色の光が照らされた廊下を走り、ホールを通り、出口のドアを開ける。
外はすっかり夜だが、賑やかだ。
飲み会帰りだろう会社員や若者の笑い声、車の音、夜を彩る蛍光色の灯り―――
『今まで悪い夢を見ていたのかもしれない』
ふと星空を眺めながら、あなたはそう思っただろう。
あの夢の中の出来事は「とんでもない夢を見た」という二人の笑い話の種となり、
いつか風化していくだろう。
今日も、明日も、明後日も、ずっと。
あなたと友人は笑い合ってすごしている。
貴方が見るくらい、昧い夢の中で。
探索者ロスト。
◆END4(NPC2と外に出る)
NPC2との会話で「一緒に出て良い」と答え、
探索者が外に出る事を決めた時点で、NPC2が姿を見せる。
「行きましょうか」と言った後、探索者と友人の返事を待たず、先に扉をくぐる。
あなたは[男性/女性]の後を追うように、先に進んだ。
一瞬、友人があなたを呼ぶ声が聞こえた気がしたが、その声は何かに遮られるように掻き消えた。
扉の向こうは闇に覆われていた。[男性/女性]の姿はもう見えない。
不安を抱きながらも友人の言葉を思い出して、あなたは真っ直ぐ、真っ直ぐ歩いた。
遠くにちらりと光る物が見えた。
光はだんだんと大きくなり、視界が白に染まるまで広がった。
その光にあなたは、心地よい暖かさと懐かしさを感じた。
暖かさに身を委ねるように、あなたは目を閉じた。
…………
あなたは目を開けた。
まず視界に入ってきたのは、友人の両親の顔だ。
嬉しそうな、泣きそうな顔でこちらを見ている。そして母親の方が縋るようにあなたの友人の名前を呼んだ。
「[友人]……![友人]!お母さんよ!分かる!?」
あなたは声を出そうとするが、喉が震えるだけでその言葉は口から出て来ない。
自身の姿を確認しようにも、体に力が全く入らない。
自分の身に何が起きているのか全く理解出来ないまま、時間だけが過ぎていく。
「[友人]![探索者]がお見舞いに来てくれたわよ!」
あなたは目を疑っただろう。
心配そうにあなたの顔を覗き込んでいる[男性/女性]は確かに、あなた自身だった。
あなたの姿をした誰かは、あなたに励ましの言葉を送って、最後にこう言った。
「ずっとお礼を言いたかったんだ。ありがとう。
あなたのおかげで私はやり直す事が出来た」
病室を出て行く足音を聞きながらあなたはこう考えたのかもしれない。
『悪い夢でも見ているようだ』と。
終わりの見えない、暗い夢から目覚めることは、二度と無いのだと。
探索者ロスト。
◆EDおまけ
NPC1と一緒に過ごす中で多く会話をする等、親密な関係になっていたら
探索者生還EDで自分の宝物を探索者に託そうとする。
探索者が外に出る事を決めた時点で、NPC1が姿を見せる。
[彼/彼女]は懐から懐中時計を取り出し、あなたに差し出してくる。
「あなたには良くしてもらったから、そのお礼」
「もう、自分には必要の無い物だから」
「あなたに持って行ってほしい」
血肉の混じった手から差し出された懐中時計には、不思議と汚れ1つ付いてなかった。
エンディングに追加の描写。
探索者が退院する前に、家族、または看護師から懐中時計を渡される。
ある時母親が、「忘れ物かしら」とあなたに懐中時計を手渡した。
あの夢の中の出来事が、現実であったのだと、それを見たあなたは確信することが出来た。
補足
◆導入で友人が渡したチケットについて
次の日になると何故か全く別物のチケットになっている理由は設定していないため
・探索者は幻を見ていた
・魔法のチケットだった
・探索者が気付かない間に友人がすり替えた
等、自由に考えて欲しいです。
他、シナリオに記載されていない設定に関してはKPが自由に扱ってください。
◆懐中時計について
作者がKPをした時は持ってても特に何も起こらないお土産扱いでしたが、POWや幸運等のステータスが増えるアーティファクト的な物にしても良いと思います。
シナリオ中のどこかに懐中時計に関するエピソードを入れても良いかもしれません。
◆ED分岐について
正解、不正解が無いシナリオなので探索者がどんな答えを出しても、後味悪くなる事が無いようにエンディングを描写してほしいです。ただEND4は毛色が大分違うので、採用する場合は
・NPC1と2が死人であることが分かる情報(図書館の『同行NPCの本』)
・●図書館の最後にある『このシーン以降伝えられる事』の1,2項目
以上をPLにしっかり伝えてください。
◆シナリオタイトルについて
儚い夢:不確かな夢
暗い夢:真っ暗な夢
昧い夢:はっきりしない夢、明るい夢
等
ED描写で漢字をあてていますが「くらい」の意味は自由に解釈してください